トラックの点呼・体調管理のIT化に期待

トラックの点呼・体調管理のIT化に期待
■運行管理者の労務コスト、遠隔点呼で変わる

定期的にテレビや雑誌を騒がせているトラック事故。16年3月には山陽自動車道「八本松トンネル」で多重事故が発生。発端となったトラック運転手、および運送会社には過労運転などの法令違反の疑いが掛けられている。

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このような事故が起きたとき、注目されるのは事業者の安全対策だ。運行管理者は乗務の前後に行う点呼などで、ドライバーの健康状態や酒気帯び状態を確認することが義務付けられている。とはいえ、トラック輸送はコストの問題などから夜間発の便も多い。また、ドライバーは複数の営業所で発着するため、そのすべてで対面による点呼を行うのは、事業者にとって大きな負担だ。

物流に関わる技術やシステムの展示会「運輸・交通システムEXPO2016」では、そんな運行管理を支援するさまざまなソリューションが展示された。中でも、注目を集めていたのが点呼業務のIT化。それも古くからある対面点呼をサポートするようなシステムではなく、遠隔会議システムを使って、画面越しに点呼を行おうという取り組みだ。

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このシステムを導入することによる事業者側のメリットは大きく2つ。それが、運行管理者を各営業所に置かずに済むことによるコスト削減と、点呼をリアルタイム確認して事故に対する管理責任を担保できることだ。

会場にはIT点呼のソリューションがいくつか展示されていたが、中でも注目されていたのがテレニシの「IT点呼キーパー」。クラウド活用により初期コストを10万円まで抑え、ランニングコストも月額1万円から。これまで運送ルートの中継地などで行っていた電話点呼でも、スマホのビデオ通話やGPSを利用して、より正確にドライバーの状況を確認できる。

会場では遠隔点呼のデモが行われていたが、映像の解像度も高く、相手の顔色なども伺うことができた。設備としてはパソコンが1台あればよいので、営業所の体制を整えるにあたっての負荷も少なくて済むだろう。

さらに、これを進めてドライバーの体調管理までケアするのが、東芝の日常健康見守りサービスだ。リストバンド型のヘルスメーターを利用して、業務時間外も含めたドライバーの健康状態を管理。睡眠時間や心拍数、血圧などを点呼時に確認することで、きめ細やかな指導が行えるという。

■無自覚な眠気や疲労、事故の前にセンサーで客観視

トラック輸送の安全管理では、運転中のドライバーの体調不良を把握する取り組みも進んでいる。15年に「自動車事故対策費補助金事業」の補助金対象機器にも選ばれている、JUKIの「スリープバスター」や「ドライブリズムマスター」もその一つだ。

これはシートに脈動センサーを装着することで、ドライバーの自律神経の変化を感知。入眠の予兆を捉えると音と映像で警告する。その他、疲労度・集中度・緊張度などのステータスも表示するため、何か他のことを考えていたり、時間的な焦りを感じているときには、それを客観的に把握できるという仕組みだ。

センサーが捉えた自律神経の変移は、専用ソフトを使ってPCから確認できる。グループ事業統括部 営業担当部長の田上直美氏によると、これによってドライバーの特性も把握できるということだ。

「夜に弱かったり、長時間ドライブに耐えられないなど、ドライバーの特性は人によって様々です。それに応じた指導や仕事の割り振りを行えば、事故のリスクは下がります。決まって月曜だけ疲れている人がいれば、週末に遊びすぎないようにというように、一声かけることもできるわけです」

とはいえ、スマホやヘルスメーター、センサーなどで監視されることを嫌うドライバーも多い。高齢化が進んでいる中で、ITに対する忌避感を持つ人もいるという。これは、福利厚生に通じるものがあるが、大切なのは会社が予算を割いて、社員の安全を気遣っていると伝えることだろう。それによって、ドライバーが自ら体調を注意するようになれば、安全に対する相乗効果が期待できる。

トラックチャーター混載便を運ぶ輸送のドライバーの健康管理が楽になる。

技術が進む中でITによるドライバーの安全対策が、より安価なソリューションで提供されつつある。ドライバーの意識改革という意味も含めて、その効果を期待したい。

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