ジョイフル
構造改革に向け、200店舗閉店へ
ファミリーレストランチェーンの(株)ジョイフル(福証、大分市)は、6月8日に直営店の約3割にあたる200店舗程度を閉店すると発表した。創業以来、「地域で一番安価で、一番身近なレストラン」を目標に掲げて成長を遂げてきた当社だが、コロナ禍の影響を受けて業績が急速に落ち込み、早急な構造改革が求められている。
低価格帯メニューで成長
当社は、1976年(昭和51年)5月に焼肉チェーン店の展開を目的として設立。79年2月に「ジョイフル」1号店を大分市内にオープンして以降は、ファミリーレストランの積極的なチェーン展開に乗り出していく。広い駐車スペースを持つ郊外型ロードサイド店の多店舗出店や、ハンバーグをはじめとする低価格帯の洋食メニューでの集客を戦略として出店を加速。93年6月に福岡証券取引所に株式を上場し95年12月にジョイフル100号店を開店すると、2001年10月に500店舗、2005年9月に700店舗まで拡大していった。
地域店舗運営子会社(現在12社)を設立して2016年1月に持株会社体制へと移行し、現時点(6月22日)では九州・沖縄エリアの401店舗を中心に全国768店舗(FC店舗55店、新業態含む)を展開。また、台北市(台湾)での飲食店事業子会社設立(2016年5月)や、関西を地盤とする同業者の(株)フレンドリー(東証2部、大阪府大東市)を子会社化(2018年6月)したことで、2019年6月期の年売上高(連結)は約728億8200万円を計上していた。
コロナ禍で売り上げ急減
ところが、食材価格上昇や人件費高騰により収益性が低下傾向にあったことに加え、特別損失計上により同期の最終損益(連結)は約49億4700万円の大幅赤字計上を余儀なくされてしまう。特別損失計上の主な要因は、営業活動から生じる損益が継続してマイナスとなっているジョイフル店舗や新業態店舗、M&Aにより子会社となった店舗の減損処理の計約30億6600万円と、想定していた収益が見込めなくなったM&A子会社に対するのれん代の減損処理約7億7600万円だ。この結果、自己資本比率(連結)は2016年12月期末の55.7%から2019年6月期(2018年6月期より決算期変更)には26.9%まで低下していた。
こうしたなかで起きたのが、新型コロナウイルスによる業績への打撃。今年1月、2月のジョイフル店舗(FC店除く)の既存店売上高は前年を上回っていたものの、3月に入ると前年同月比16.1%減と低下。さらに緊急事態宣言が発令されて以降は、多くの店舗で臨時休業や営業時間短縮を強いられ、4月の既存店売上高は同55.3%減、5月は同52.7%減と大幅な落ち込みとなった。これを受けて当社では、「今後も定期的に同様の感染症が発生することも見込まれ、外食産業を取り巻く環境が大きく変化する可能性があることから、財務基盤強化を図る観点から収益改善が見込めない店舗の閉店を柱とする経営合理化策を実施する」として、今年7月以降に200店舗程度を順次閉店することを決めた。また、子会社化した(株)フレンドリーも全70店舗のうち41店舗を閉店することを6月4日に発表しており、グループ全体での収支改善を急いでいる。
リスク耐性をどう高めるか
当社だけでなく、外食チェーン業界では福岡発祥の「ロイヤルホスト」を運営するロイヤルホールディングス(株)(東証1部)が2020年12月期第2四半期の連結業績予想で売上高を前回発表の664億円から390億円に、経常損益を6億円の黒字から145億円の赤字に大幅下方修正したほか、福岡に本社を構える(株)梅の花(東証2部)も5月の既存店売上高が前年同月比85.9%減となるなど、新型コロナの影響が深刻となっている。今後、新型コロナの第2波発生の懸念も残るなか、消費者の行動や外食に対する価値観も大きく変化する可能性もあるだろう。各社とも立て直しに向けて経営合理化策による財務基盤の強化などを進めているが、今後は経営のリスク耐性をどう高めていくのか。今こそ各社経営陣の手腕が試されている。
引用:帝国データバンク